「走ったり跳んだりすると、尿がもれそうで怖い」「くしゃみのたびに気になって、運動から遠ざかってしまった」。そんな悩みを、誰にも言えずに抱えていませんか。日本泌尿器科学会のホームページの一般向け解説では、尿失禁(尿もれ)について「40歳以上の女性の4割以上が経験しており」と説明されています。決して珍しい悩みではありません。
運動を全部やめてしまう前に、まず知っておきたいのは「もれ方には種類があり、種類によって対処の入口が違う」ということです。この記事では、尿もれの4つのタイプ、よく聞く「骨盤底筋(こつばんていきん)」の役割、骨盤底筋の訓練を受診で確かめてから始めたい理由、そして運動とどう付き合うかを順に整理します。病気の説明は、日本泌尿器科学会のホームページの一般向け解説を出典にしています。運動との付き合い方の段取りは、LIFEPLUSからのご提案です。
尿もれは「我慢している人」がとても多い悩み
日本泌尿器科学会は、尿失禁を「自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうこと」と説明したうえで、悩んでいる人は多いのに「恥ずかしいので我慢している方がほとんどです」と書いています。そして、尿失禁の状態や原因に応じた治療法があるので、我慢せずに泌尿器科を受診するよう呼びかけています。
運動の場面でいえば、「もれるのが心配だから、もう動くのはやめておこう」と自分の中だけで結論を出してしまうのが、いちばんもったいない形です。もれの原因がわからないまま運動をやめても、もれそのものの原因が確かめられるわけではありません。順番としては、まず泌尿器科で原因を確かめ、そのうえで運動の中身を組み立てるのが、遠回りに見えても筋の通った順番です。
もれ方には4つのタイプがある
日本泌尿器科学会は、尿失禁を大きく4つに分けています。名前は難しいですが、「どんなときにもれるか」で見ると違いがわかりやすくなります。
(1)腹圧性尿失禁
「重い荷物を持ち上げた時、走ったりジャンプをした時、咳やくしゃみをした時など、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまう」タイプ。女性の尿失禁の中で最も多いとされています。
(2)切迫性尿失禁
「急に尿がしたくなり(尿意切迫感)、我慢できずに漏れてしまう」タイプ。
(3)溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
尿を出したいのに出せず、少しずつもれ出てしまうタイプ。尿が出にくくなる排尿障害が前提にあり、男性に多いとされています。
(4)機能性尿失禁
排尿の機能は正常でも、体を動かす機能の低下や認知症が原因で起こるタイプ。例として、歩行障害のためにトイレまで間に合わないケースが挙げられています。
(日本泌尿器科学会「尿が漏れる・尿失禁がある」より。「 」内は原文のまま、それ以外は要約)
運動中に「走った瞬間」「跳んだ瞬間」にもれるなら、説明のうえでは(1)の腹圧性に近い形です。一方、「運動中に急にトイレに行きたくなって間に合わない」なら(2)の切迫性に近い形です。両方に当てはまるように感じることもあるでしょう。
ただし、これはあくまで「どのタイプに近そうか」の見当です。学会のページでは、問診や診察に加えて、排尿日誌や検尿、エコーによる残尿量の測定などで診断すると説明されています。自分でタイプを決めつけず、見当は受診のときに伝える材料にしてください。尿に血が混じる、尿がまったく出ないといった様子があるときは、運動のことを考える前に、後半の「こんなときは早めに泌尿器科へ」をご覧ください。
骨盤底筋とは?尿もれとの関係
尿もれの話でよく出てくるのが「骨盤底筋」です。名前のとおり骨盤の底にある筋肉のグループで、日本泌尿器科学会の解説では、尿道括約筋もこの「骨盤底筋群」に含まれるとされています。そして、この筋肉がゆるむことが、腹圧性尿失禁の原因として説明されています。
では、何が骨盤底筋を傷めたり、ゆるめたりするのでしょうか。日本泌尿器科学会は、腹圧性尿失禁について次のように説明しています。
「骨盤底筋群という尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が緩むために起こり、加齢や出産を契機に出現したりします。荷重労働や排便時の強いいきみ、喘息なども骨盤底筋を傷める原因になるといわれています。」
(日本泌尿器科学会「尿が漏れる・尿失禁がある」より)
学会の説明に挙がっているのは、加齢や出産、重い荷物を扱う仕事、排便時の強いいきみ、喘息などです。原因はひとつとは限らないことがわかります。
骨盤底筋の訓練は「受診で確かめてから」
日本泌尿器科学会は、軽い腹圧性尿失禁については、骨盤底筋訓練で尿道のまわりの筋肉を強くすることで改善が期待できると説明しています。また、肥満の方や最近急に太った方では減量が有効なことがあり、こうした方法で改善しない場合は手術も選択肢になるとしています。切迫性尿失禁では、薬物療法に、飲水コントロール・骨盤底筋訓練・膀胱訓練などの行動療法を併用すると説明されています。
つまり骨盤底筋訓練は、泌尿器科でも使われる方法のひとつです。だからこそ、自分に合うかどうかを、医療機関で確かめてから始めていただきたいと考えています。理由は2つあります。
理由1:もれの種類や程度で、訓練の位置づけが変わる
先ほど見たとおり、日本泌尿器科学会の解説では、骨盤底筋訓練は軽い腹圧性尿失禁ではまず挙げられている方法として、切迫性尿失禁では薬物療法と併用する方法のひとつとして紹介されています。学会自身も「このように尿失禁の種類や程度により、治療法は様々です。」とまとめています。
同じ学会の骨盤臓器脱(膀胱や子宮などが下がってくる状態)の解説でも、軽度の場合は骨盤底筋訓練で症状の改善が期待できる一方、中等度以上の場合は改善はほとんど得られないと書かれています。そうした場合には、ペッサリーリングや手術などの方法も説明されています。同じ訓練でも、自分に合うかどうかは診断を受けてみないとわからない、ということです。
理由2:もれの原因が骨盤底筋とは限らない
4つのタイプで見たとおり、尿もれには骨盤底筋のゆるみ以外の原因もあります。たとえば日本泌尿器科学会は、女性では膀胱瘤や子宮脱などの骨盤臓器脱も切迫性尿失禁の原因になると説明しています。原因が違えば、合う対処も変わります。「骨盤底筋を鍛えれば何とかなる」と決めてかかる前に、原因を確かめることが先です。
このため、この記事では骨盤底筋の体操の手順はご紹介しません。手順や回数は、受診先で自分の状態に合わせて教わってください。
運動を全部やめる前に考えたいこと
ここからは、運動とどう付き合うかの話です。受診して方針が決まるまでのあいだ、そして方針が決まってからも、次の4つを意識してみてください。
1.もれやすい場面を書き留める
日本泌尿器科学会によると、受診すると排尿日誌を数日間つけて、排尿の状態や尿失禁の程度を見ることがあります。その前段階として、「どの動きのときに」「どのくらい」もれたか、または急にトイレに行きたくなったかを、簡単にメモしておくのがおすすめです。
「階段を駆け上がったとき」「重い買い物袋を持ち上げたとき」「くしゃみをしたとき」のように場面がわかると、受診のときに説明しやすくなります。同時に、運動の中で「今は避けたい動き」もはっきりします。
2.動けなくなることも、もれにつながる
4つのタイプのうち「機能性尿失禁」は、排尿の機能そのものではなく、体を動かす機能の低下などが原因で起こると説明されていました。トイレまで歩いて間に合わない、というケースです。
もれが心配で外出や運動を控えた結果、歩く・立ち上がるといった体の力まで落ちてしまうのは避けたいところです。「運動をやめる」か「続ける」かの二択ではなく、「もれやすい動きは控え、それ以外の動きは続ける」という選び方もあります。どの動きなら大丈夫かは、受診先で相談したうえで決めてください。
3.重いものを持つ動き・強くいきむ動きは控えめに
先ほどの学会の説明では、荷重労働や排便時の強いいきみも骨盤底筋を傷める原因になるといわれています。
筋力トレーニングでは、つい重さを増やしたくなります。しかし、もれが気になっているうちは、重さを急に上げたり、息を止めて強くいきんだりするやり方は控えめにするのが無難です。どこまでの負荷なら問題ないかは、受診で方針が決まってから、その範囲で調整していきましょう。
4.体重のことを言われたら、食事もあわせて考える
日本泌尿器科学会は、肥満の方や最近急に太った方では、減量が有効なことがあると説明しています。受診先で体重について助言を受けたら、運動だけで何とかしようとせず、食事もあわせて見直すのが現実的です。ただし、急な食事制限は続きにくいものです。医師から食事の指示が出ている場合は、その指示が優先です。
こんなときは早めに泌尿器科へ
日本泌尿器科学会は、尿失禁について「年齢的なこととあきらめたりせずに」泌尿器科専門医に相談するよう呼びかけています。もれ以外に次のような様子があるときも、運動の工夫より先に、早めに受診してください。同学会のホームページには、症状別の一般向け解説ページがあります。
・何かが下がってくるような感じがある(骨盤臓器脱の説明では、長く立ったあとや歩いたあと、午後になると症状が強くなるとされています)
・尿に血が混じる
・排尿のときに痛みがある
・排尿の症状(頻尿・排尿痛・残尿感など)とあわせて熱が出ている(学会の解説は「できるだけ早く泌尿器科専門医を受診してください」としています)
・尿が出にくい、勢いが弱い
・尿がまったく出ない(「尿閉」と呼ばれ、学会の解説では緊急の処置が必要な状態とされています)→ 様子を見ずに、すぐに医療機関へ
(日本泌尿器科学会「こんな症状があったら」の各ページより要約)
運動中にこうした症状に気づいたときは、その日の運動はそこでやめ、上のとおり医療機関にご相談ください。
LIFEPLUSでできること
LIFEPLUS(ライフプラス)は、愛知県日進市にあるケア特化型のコンディショニング専門パーソナルジムです。「鍛える前に、まず整える」を大切にしています。
当施設は医療機関ではないため、尿もれの診断や治療は行っていません。この記事でも骨盤底筋の体操はご案内していません。そのうえで、受診して方針が決まっている方や、医師から運動を勧められた方が、全身の運動を無理のない形で続けるお手伝いはできます。デリケートなことなので、くわしい症状まで話していただく必要はありません。「この動きは今は避けたい」と伝えていただければ、種目や負荷の選び方に反映します。ただし、医師から運動の内容や重さ、期間について制限を受けている場合は、その内容をお知らせください。妊娠中の方や出産後まもない方は、運動の内容について産婦人科の主治医にもご相談ください。
体重について助言を受けている方には、管理栄養士による食事のサポートもご用意しています(管理栄養士のダイエット食事サポート)。医師から食事内容の指示を受けている方は、事前に主治医にご相談ください。
体験ではきつい運動は行いません。体の変化には個人差があり、期間や結果をお約束することはできませんが、今の体の状態に合わせて内容を考えていきます。
当施設は医療機関ではありません。気になる症状があるときは、まず医療機関にご相談ください。
出典:日本泌尿器科学会「尿が漏れる・尿失禁がある」/同「何かが下がってきた」/同「こんな症状があったら」(いずれも日本泌尿器科学会ホームページの一般向け解説)。2026年10月6日に内容を確認しています。「 」で示した文章は出典の原文のままです。それ以外の出典の説明は、LIFEPLUSが出典の内容を要約・編集したものです。
